DIRECTORS #02 新海誠の世界

DIRECTORS #02 新海誠の世界

カメラを回せば簡単に映像が撮れてしまう実写映像に比べ、アニメの制作は大変だ。何もないところから一画面一画面作りあげていかなければならない。だから、アニメの制作は集団作業なのだ。ところが、ひとりでハンパないクオリティの作品をつくったクリエイターがいた。それが新海誠だ。20代後半に自主制作した約25分のフルデジタルアニメ「ほしのこえ」は、監督・脚本・演出・作画・美術・編集など、音楽とヒロインの声以外はすべて自分で行った。これが第1回新世紀東京国際アニメフェア21公募部門優秀賞ほか、数々の賞を受賞し、一躍世界中から注目を集めた。その後、手掛けた4本の劇場用長編は国内外のアニメ賞を次々受賞。スタッフの数は増えても、脚本・絵コンテ・演出・撮影・編集などひとり何役もこなすスタンスは今も変わらない。この夏には3年ぶりの新作映画「君の名は。」が公開予定。また、「ほしのこえ」と同じ頃に作られた自主制作短編「彼女と彼女の猫」を原作としたテレビアニメが新たなスタッフにより制作され、この3月からテレビ放送されている。さらにCMも多く手掛けており、意識せずとも新海アニメを目にしたことがある人は多いだろう。

©Makoto Shinkai / CoMix Wave Films
©Makoto Shinkai / CMMMY


新海アニメは、設定がどうであれ描かれるのは登場人物の心情、相手への想いである。それが大人向けアニメと言われる所以でもある。戦闘ロボットが異星人と戦うSF「ほしのこえ」や、南北に分割占領された日本を舞台にした「雲のむこう、約束の場所」は、設定は奇抜だが、どちらも離れている相手への想いが叙情的に描かれている。短編3本の連作という形をとった「秒速5センチメートル」では現代の日常を舞台にすることで、より繊細に男女の心の移ろいが表現された。終盤、山崎まさよしの主題歌にのせて、想いが映像となって溢れ出るシーンは圧巻だ。映像と音楽のマッチングも新海アニメの特徴と言える。しかし、最大の特徴は、風景描写、背景の美しさである。特に空、雲、星、雨といった自然の描写が素晴らしい。「言の葉の庭」は、雨が重要なモチーフとなっており、その表現力には目を見張る。また、ジブリアニメへのオマージュを込めた冒険ファンタジー「星を追う子ども」では、大人向けであった新海アニメの対象年齢を広げる試みにも挑戦している。今回は、これら進化し続ける新海誠の代表作がすべて配信される。1本観ればもう1本、さらに1本と観てしまうことは間違いない。

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